「年功序列」と「上が詰まっていて出世しづらい」会社の関係

「私の受けている会社は、日系企業で比較的年功序列なのはいいところなのですが、上が詰まっていて出世しにくいと聞いたことがあります。本当でしょうか?」
といった質問を受けることがちらほらあるので、年功序列と「上が詰まってる」現象について、書いてみようと思います。
   

そもそも、理想的な「終身雇用」「年功序列」とはどういうことか?

日本型雇用システムの独特の特徴と言われた「終身雇用」「年功序列」。1990年代のバブル崩壊とともに制度破綻が進んでいると言われますが、まずは理想的な「終身雇用」「年功序列」の状態を考えてみましょう。

・新入社員が100名入社したとする。
・離職率は低く、5年後には90名が主任に昇格、10年後には80名が課長に昇格する。
・当然ながらメンバー(平社員)よりも主任の人数は少なく、課長の数はもっと少ないのが健全な組織である。

これらの条件を満たす組織を図で表すと、下記のようになります。

この図からもわかる通り、健全な「終身雇用」「年功序列」が成り立つためには、会社の規模が急速に拡大している「急成長中の会社」であることが必須条件となります。

日本の「高度経済成長期」と呼ばれる時代(1973年まで)は、大企業の多くが上記の条件を満たすような、まさに近代史上稀に見る成長フェーズにありました。
(実質経済成長率は、なんと今の約10倍です。)

その後のバブル期には実態としての経済成長は鈍化したものの、資産価値の上昇による投資収益で会社の利益は増え続けます。会社の人員規模を急激に大きくする必要のない(が、収益は上がっている)この状況に企業はどう対処したかというと、必要のない管理職ポストを増産することで、表面上「終身雇用」「年功序列」体制を維持してきたのです。

ところがバブルが崩壊し、だんだんと新しいポストを用意することが出来なくなった。

これが、今の日系大企業の状況であり、「上が詰まっている」状況です。

従って冒頭の「上が詰まっているのでしょうか?」
という質問に対しての答えですが、

・離職率が低い
・会社がここ数年急成長・急拡大していない

この2つの条件を満たす企業は、「上が詰まっている」と考えてほぼ間違いありません。

これが一つ目のポイント。
 
 

「上が詰まっている」企業が年功序列を維持しようとすると、どうするのか?

次に、「上が詰まっている」企業がそれでも年功序列を維持しようとするとどうなるのか?
これも答えは簡単で、
「昇進のスピードを遅くする」
しか手はありません。

勘違いしやすいのですが、「年功序列」という考え方は、
「勤続年数を重視して評価する」
ということであり、必ずしも
「全員が横並びで昇進する」
ということを意味していません。

同期が100人いたら、その中で昇進する人もいれば、しない人もいる。
ただし基本的には勤続年数を重視するので、よほどのことが無い限り降格することは少ないですよ、ということです(出向や転籍を除く)。
つまり例えるなら、
「階段を1段登るかもしくは足踏みか。1段降りることは少ないですよ。だから人によってスピードは違うけれど、長く務めるほど階段を登っていけますよね。」というのが、年功序列の考え方です。

では、「昇進のスピードを遅くする」というのは何を意味しているのかと言うと、
階段を登れる割合を少なくする
ということに他なりません。

つまり、同期が100名いたとして、90名が毎年階段を登っていたところを、70名、50名、極端な話10名しか階段を登れないようにする、ということです。これは実際に、かなり多くの大企業で行われている変化です。

つまり、40年前に行われていた「年功序列」と、今の「年功序列」では、下の図のようにかなりイメージが異なります。
そしてこれが、上の世代の方が年功序列の大企業に抱くイメージと、今実際に入社した若手社員が感じる閉塞感とのギャップにもつながっています。

同じ「年功序列」でも、昔と今とではイメージがかなり違う
これが2点目にお伝えしたいことです。

     

上が詰まると、どうなるのか?

さて、上が詰まると、当然ながら「その次のポストの人」が出世しにくくなります。簡単に言うと、
部長が詰まると、部長になれないため課長が増えて(詰まって)しまい、
課長が詰まると、課長になれない係長が増えて(詰まって)しまう・・・
というように、上から下へと順番に詰まりが進行していきます。
(交通渋滞が徐々に後ろに伝播していくのに似ています。)

つまり、「上が詰まる」という変化はある日突然起きるのではなく、バブル崩壊後の構造変化にともない、この20数年間で、徐々に進行してきた変化であるということです。

そして、

慢性的に人員の「詰まり」が発生した場合に企業の取る行動は何か?

それは、

「採用の抑制」

です。

今、採用の人数を絞っている日系大企業は、「上だけでなく、下も詰まっている」状況にある可能性が高いと考えていいでしょう。

もちろん、「上が詰まっているだの詰まっていないだの関係ない!自分はどんなに少ない確率であったとしても、出世のイスを勝ち取るんだ!」
という人はそれでいいと思います。と言うかむしろ、そんな気概のある人に大企業に入社してもらいたい。

「大企業に入っておけばそれなりにエスカレーターで出世できる(給料が上がる)だろう」
と考えている人は、今一度企業に対する考え方を見直してみることをおススメします。

この記事のまとめ

①「離職率が低い」かつ「急成長・急拡大していない」企業は、必然的に「上が詰まっている」。
同じ「年功序列」でも、昔と今とではイメージがかなり違う
③ 採用を抑制している大企業は、「上だけでなく下も」詰まっている可能性が高い

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